波にゆだねる
久々に、海まで。
波に乗る人たちをぼんやり見ながら、
海のなかに入り、波に身をゆだねるときのことを思う。
海は入ったばかりの何分かはとても怖い。
波に翻弄されないように、身を固くする。
でも次第に、観念したような気持ちになり、
波に身をまかせはじめる。
すると次第に海と一体になったような
なんとも言えない心地よさがやってくる。
それは、何かに似ている。
いつもと違う場に身を置く時は
いつも少し緊張する。
自分の感情がどこにどんなふうに動くのかちょっと怖い。
でもその感情の動きはそのまんまにして
あらがわず、ただゆだねることができたら
それはとても気持ちのいいことだろうなぁと。
*
“人の話をきく”ことが、私のしごとの重要な部分であると気づき
それについて学ぶ過程で驚いたのが
人の話をきくためには、まずは自分のおなかのなかにある感情に触れ、
味わう必要があるということだった。
そして、その場に“ただいる” こと、
相手を主体にしてきくことの難しさを知った。
自分のその日の具合によっては、ぜんぜん“きく”身体になれない。
でも海を見ながら散歩をするうちに
海に、波に、身をゆだねることは
ただそこにいて“きく”ことにちょっと近いのかも。と思ったりした。
*
海まで歩くアイデアは、悪くない。
身体を、こころを、こわばらせず
そのまんま“ただいる”ために
散歩は、海の景色は、
いい作用をもたらしてくれるみたいだ。